変形性膝関節症の診断は比較的容易ですが、別の病気が原因で変形性膝関節症になっていることもあり、きちんと見きわめる必要があります。
適切な治療を行うためには、正しい診断が欠かせません。
ここでは、病院での変形性膝関節症の検査と診断の流れを解説します。
もくじ
変形性膝関節症の診断
変形性膝関節症の診断は、問診などの診察とX線検査でほぼ可能ですが、別の病気による膝痛と区別したり、一次性か二次性かを判断する必要があります。
どんな病気も同じですが、正しい診断なしに適切な治療を行うことはできません。変形性膝関節症の診断は患者さんの自覚症状と、膝の客観的な状態を総合的に判断して行います。
まず、「問診」で患者さんの自覚症呎や生活背景を聞き取り、次に、脚の形や歩き方などを見る「視診」、実際に触って膝の動きや痛む場所などを確認する「触診・理学的検査」へと診察を進めていきます。
変形性膝関節症の重要な診断材料となる、関節の骨と骨の隙間は、単純X線検査でよくわかります。よりくわしい情報が必要なときには、MRI(磁気共鳴画像)検査や、CT(コンピユー
夕断層撮影法)検査も追加します。
血液検査や尿検査も行いますが、それは、関節リウマチや痛風・偽痛風の有無を調べるためです。
また、関節液を採取して調べる検査を行うこともあります。関節液の状態からは、炎症の有無、感染の有無、出血の有無などがわかります。
変形性膝関節症の診断は、特別難しいものではありませんが、原因疾患がある二次性か、そうでない一次性かを見きわめることが重要です。二次性の場合は、変形性膝関節症の治療だけでなく、原因疾患の治療をきちんと行う必要があるからです。
一次性か二次性か
同じ変形性膝関節症でも、原因となる病気(原因疾患)がはっきりしている二次性のものと、原因疾患がとくにない一次性のものでは、治療がまったく異なります。
さまざまな診察や検査を行うのは、痛みの原因が変形性膝関節症だと明らかにするとともに、一次性か二次性かを見きわめるためです。
二次性の原因疾患としては、関節リウマチ、痛風・偽痛風、化膿性関節炎、半月板損傷・靭帯損傷、大腿骨顆部の特発性骨壊死などがあります。
問診や視診、触診・理学的検査、各種の画像検査、血液検査・尿検査、関節液検査などを行うことによって、これらの病気の有無がわかります。
画像検査や血液検査の前に、患者さんの話や膝の状態から痛みの原因を推測します。問診、視診、触診・理学的検査は、正しい診断を導き出すための第一歩です。
自覚症状や生活背景を聞く「問診」
問診でいちばん大切なことは、患者さんがどのような症状で苦しみ、何に困っているのかを、医師が把握することです。
自覚症状を伝えられるのは、患者さんやその家族だけといっても過言ではないので、診察に入る前に、できるだけ症状を整理しておきましょう。「症状メモ」をつくっておくと、医師との会話に役立ちます。
生活背景は、現在の生活だけでなく、職歴やスポーツ歴、骨折や脱臼、半月板損傷や靭帯損傷など膝のけがや、関節炎などの既往も含まれます。
また、家族歴として、血縁者に変形性膝関節症、関節リウマチ、痛風などの病気をもつ人がいるかどうかも確認します。
病院で記入を求められる問診票には、多くの場合、心臓病や糖尿病など全身の病気の有無や、現在治療中の病気について尋ねる項目がありますが、これらは、患者さんの健康状態を総合的に判断するために必要な情報であり、治療を行うための参考になります。
問診で確認されるポイント
①自覚症状(いつごろから、どこがどんなときに、どのように痛むか)(こわばりやひっかかる感じの有無)(腫れや熱っぽさの有)
②生活背景(現在の仕事、生活様式、趣味など職歴やスポーツ歴)
③病歴(膝のけが、全身の病気、現在治療中の病気、飲んでいる薬)(血縁者に変形性膝関節症、関節リウマチ、痛風の人がいるか)
歩き方や脚のかたちを見る「視診」
O脚やX脚の人は変形性膝関節症になりやすく、病気の進行にしたがってO脚やX脚が悪化します。
ひざがまっすぐ伸びない、歩幅が狭くなった、膝がぐらついて不安定なな歩き方をするなども、変形性膝関節症の特徴です。
脚のかたちや歩き方を見ることにょって、膝に関するさまざまな情報が得られます。視診を受けるときは、いつも履いている靴を履いて行き、普段の歩き方を見てもらえるようにするとよいでしょう。
視診で確認されるポイント
①脚の形を見る(0脚、X脚の有無や程度)
②歩き方を見る(膝の伸び方やぐらつき、歩幅など)
変形性膝関節症があると、靭帯が引っ張られて伸びるため、靭帯がゆるんで膝がぐらつくようになります。
膝の動きや痛む場所を確認する「触診・理学的検査」
医師が実際に膝をさわったり、動かしたりして膝の状態をくわしく調ベます。確認するのは主に次のようなことです。
- 腫れや熱っぽさの有無
- 水がたまっているかどうか
- 膝を動かしたときの異常な音
- 膝の可動域
- 膝のぐらつきや筋力低下の有無
- 痛む場所
とくに、押して痛いところ(圧痛点)がないか確認する診察は重要です。膝の靱帯や筋肉の痛んでいる場所がわかり、診断の助けになります。
画像検査で変形性膝関節症の状態を判断
膝の状態を客観的に調べるのが画像検査です。大腿骨と脛骨の隙間や、大腿骨と膝蓋骨の隙間の状態、骨棘や骨のう胞の有無などがわかります。
単純X線検査
変形性膝関節症の診断に、単純X線検査は欠かせません。正面や側面から膝を撮影し、膝の関節(大腿脛骨関節、膝蓋大腿関節)の状態を調べます。
骨と骨の隙間のあき具合や、骨棘や骨のう胞の有無を確認することが目的です。
問診、視診、触診・理学的検査、血液検査や尿検査の結果に加え、単純X線検査の所見で、変形性膝関節症が明らかなら診断が確定します。
単純X検査の画像からは、進行の程度(病期)もわかりますが、病期と症状の重症度は、必ずしも一致しません。病期が進んでいるのに、痛みなどの症状がそれほどないこともあれば、逆のこともあります。
MRIやCTなどの精密検査
MRI検査は、関節軟骨や半月板、靱帯、滑膜なども映し出すことができます。半月板損傷や靭帯損傷の有無、大腿骨顆部骨壊死の有無を調べたいときや、手術の前に、軟骨の状態も含めた詳細な情報がほしいときに行います。
CT検査は、骨の状態をくわしく知ることのできる検査です。骨棘や骨のう胞といった骨の変形、骨粗鬆症など骨の質の異常などを、くわしく調べることができます。
病院や医師の選び方とセカンドオピニオン
手術件数や専門医の資格、さらには医師の容貌までも簡単に調べられるいま、情報がありすぎて迷うほどですが、医療機関を選ぶときの第一のポイントは、自宅から無理なく通えるかどうかです。
ただし、近いからといって、いきなり大学病院に行くのは、時間がかかるばかりで得策とはいえません。
変形性膝関節症の場合、初診ではまず問診、次に触診などのを行い、X線検査後、その結果を説明され、治療を行うというのが一般的です。知っておきたいのは、1回の受診で治ることはまれであり、最低でも1力月間は治療を続けないと、効果は判断できないということです。1力月通院してもまつたく改善しないときには、医師に正直に伝え、次の手を考えてもらい、それでうまくいかなければ、別の医療機関の受診を検討してもよいでしょう。
変形性膝関節症を診てもらう医師
医師も一人の人間で、相性もあるため一概にはいえませんが、次のような場合は、別の医師や医療機関への変更を考えるベきかもしれません。
医師を選ぶチェックポイント
- 不潔
- 服装がだらしない(白衣が汚れている、柄物のTシャツが白衣から透けているなど)
- 説明がわかりにくい
- 質問するといやな顔をする
- 初診時から強く手術をすすめる
- 結果の得られない治療を続ける
- なんとなく好きになれない
1と2はいうまでもないことですが、3は、患者側の立場で物事を考えられない可能性があります。4は、診療時間には限りがあるため、患者側にも配慮が必要ですが、質問にわかりやすく答えることは、医師に求められる能力の1つです。
次に5ですが、変形性膝関節症で手術になるのは、一般的に10人にー人です。多くは保存療法を続けていくので、いわゆるゴッドハンドの名医より、長くつきあえる「良医」に出会うことが大切です。
したがって、6や7も見逃せません。良医とは、人間性とプロ意識を持った医師のことです。手術をすすめられて、セカンドオピニオンを聞きたいと思ったら率直に相談しましょう。快く紹介状や検査デー夕を用意する医師なら、誠実な人柄だと考えられます。もし、手術することになったら、このチェックポイントを確認しましょう。