関節内注射は関節内に薬剤を直接注入する変形性膝関節症の治療法です。
ヒアルロン酸製剤は、初期から使うこともありますが、ステロイド薬は中期以降に使用します。
ヒアルロン酸製剤関節内注射には注意点がいくつかあります。
もくじ
ヒアルロン酸関節内注射
間接液の主成分ヒアルロン酸は、粘り気のある無色透明の液体で、なめらかさと弾力性にすぐれ、関節の潤滑油として働いています。
加齢に伴ってヒアルロン酸が徐々に減少すると、関節のヒアルロン酸濃度も低下し、粘り気がなくなって、なめらかさや弾力性も失われます。
変形性膝関節症の人では、滑膜の炎症によって滑液が多量に分泌されるために、間接液はさらに薄まり、潤滑油としての役割を十分に果たせなくなってしまいます。
そこで、「ヒアルロン酸製剤」を、関節内に注入してヒアルロン酸を補う治療が、1980年代後半から行われるようになりました。
いわば、動きのわるくなった機械に、潤滑油をさすのと同じです。
ヒアルロン酸注射の効果
- 膝の痛みがやわらぐ
- 炎症が起こりにくくなる
- 膝の動きがなめらかになる
- 軟骨の破壊にブレーキがかかる
ヒアルロン酸は様子をみながら注射の頻度を見きわめます。ヒアルロン酸製剤を注射することによって、関節液の働きが正常に近づき、痛みや炎症がやわらぐほか、膝を動かしたときのなめらかさも、人によって程度の差はありますが、回復します。
注射をする頻度は、製剤に含まれるヒアルロン酸の分子量によって異なりますが、週1回の頻度で、3〜5回注射するのが一般的です。あるいは、2〜4週間に1回の注射を継続して行うこともあります。
症状がどれくらい改善するか様子をみながら、注射の頻度を見きわめます。
また、ヒアルロン酸製剤注射は炎症を鎮めてから行います。
変形性膝関節症の保存療法として、すぐれた効果を発揮するヒアルロン酸製剤の関節内注射ですが、よりよい効果を得るためには、まず炎症を鎮めるというのが基本です。
ほかの保存療法で、炎症を少しでも改善してから注射したほうが、高い効果を期待できます。
膝に水がたまる関節水腫になっているときは、先に水を抜きます。濃度の低い間接液が多量にあるところに、高い濃度のヒアルロン酸を注射しても、すぐに薄まってしまうからです。
ステロイド薬の関節内注射も
ステロイド薬の関節内注射の方法は、ヒアルロン酸製剤の関節内注射と同じです。ステロイド薬を注入することにより、関節内の炎症が治まり、痛みも改善します。
ステロイド薬は抗炎症作用が非常に強いため、膝の炎症や痛みが強度で、日常生活に支障がある場合などには、劇的な効果をもたらします。
しかし、頻繁に行うことはできません。なぜなら、ステロイド薬には関節軟骨の新陳代謝を妨げたり、新しい骨がつくられるのを阻害する危険性があるからです。
場合によっては、急激な関節の破壊が起こる「ステロイド関節症」を発症することもあります。
このような副作用を防ぐために、注射の間隔を少なくとも6週間以上あけ、何年も続けて実施することは避けます。
ヒアルロン酸注射の注意点・副作用
ヒアルロン酸注射後は指示に従って病院内で安静にする(動悸や息苦しさ、じんましんに注意)ことが大事です。
激しい運動は数日避ける、注射したところをもんだり、不潔な手でさわったりしないなどの注意点もあります。
膝の痛みや熱っぽさの悪化、全身の熱やだるさなど、異常を感じたらすぐに医療機関に相談しましょう。
ヒアルロン酸関節内注射の副作用
ヒアルロン酸製剤の関節内注射には、副作用がほとんどありませんが、ヒアルロン酸に対してアレルギ一のある人もいます。
また、針を刺したところから細菌が入り、関節内で増殖して化膿性関節炎を起こすことがまれにあります。
変形性膝関節症で膝にたまった水を抜く治療
変形性膝関節症の炎症によって膝に水がたまり、関節水腫という状態になると、炎症が悪化したり、膝の働きがわるくなるなどします。
そこで、一時的に症状をやわらげるために、膝にたまった水を、注射器で抜き取る治療を行うことがあります。
水を抜くと癖になるというのは間違いで、抜いたあとに再び水がたまるのは、炎症が続いているからです。
重要なのは炎症を鎮めること。水を抜いて炎症の悪化を食い止め、膝を動かしやすくしたうえで、保存療法を適切に行えば、多くの場合、炎症は改善します。
水抜き後のヒアルロン酸製剤注射
水を抜いたあとにヒアルロン酸製剤の関節内注射を行うと、膝の働きが改善し、保存療法の効果が上がることが期待できます。
注意点としては、水を抜いた日は入浴を控え、針を刺した部分にさわらず、清潔を保つようにしましょう。