このページでは、変形性膝関節症の症状による診断、治療方法を解説しています。
変形性膝関節症は、早めに対処することが大切です。
初期や中期のうちに保存療法を始めれば、病気の進行を遅らせることができるからです。
そのためにも、痛みを引き起こしている病気が、変形性膝関節症であることをはっきりさせる必要があります。
もくじ
変形性膝関節症の診断
変形性膝関節症の診断は、初期でも比較的容易です。膝に異常を感じたら、早めに整形外科へ行きましょう。
運動療法なども、痛みの原因を突き止めてから行いましょう。こわばりや違和感だけでも整形外科で診察や検査を受けることも大事です。
変形性膝関節症の症状
次のような症状が1つでもある場合は、変形性膝関節症の可能性が高いので、強い痛みがなくても、一度整形外科を受診してみましょう。
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膝のこわばり(朝に起きたときにとくに強く感じる)や違和感
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長時間歩くなどしたあとに痛む
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膝を曲げ伸ばしするときに、引っかかる感じがする
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歩き始めや立ち上がるときなど動かし始めに膝が痛い
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O脚が以前よりも悪化している
変形性膝関節症は、 診察と画像検査で診断がつきます。病名が曖昧なまま、運動療法や物理療法などを行っても十分な効果は望めず、場合によっては、症状を悪化させてしまうこともあるので注意しましょう。
膝の痛みを放っておいてはいけない
膝の痛みで日常生活に支障があっても、「年のせいだから」と、あきらめている人は少なくありません。
しかし、そのまま放っておけば、症状はますます悪化し、強い痛みや関節の変形のために寝たきりとなることもあります。
次のような症状が1つでもある場合は、整形外科の専門的な診察と治療が必要です。
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膝が熱っぽい
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膝が腫れている
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痛みのために、歩行や階段の上り下り、正座がつらい
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安静にしているときや、夜寝ているときも痛む
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膝がまっすぐ伸びない
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膝がしっかり曲がらない
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歩行時や階段を下りるときに、膝くずれが起きる
変形性膝関節症の治療
まずは保存療法で膝の負担を減らすことがすすめられます。
変形性膝関節症の治療は、「保存療法」と「手術療法」に分けられますが、まずは保存療法で膝の負担を減らすことが重要です。
保存療法
生活改善
膝への負担が少ない生活習慣に切り替える
体重コン卜ロール
肥満の人は体重を減らし、膝の負担を減らす
運動療法
膝のストレッチングと筋肉トレーニング、全身の有酸素運動
物理療法
膝を温めたり、冷やしたりして症状をやわらげる
装具療法
足底板やサポーターで膝の負担を減らす
薬物療法
薬で痛みをやわらげたり、炎症を抑えたりする
関節注射
ヒアルロン酸やステロイド薬を関節に直接注入し、症状を鎮める
保存療法は、変形性膝関節症を予防し、進行を抑えるためにやっておくべきケアであり、とくに初期や中期の人には大きな効果が見込めます。
その人の症状や生活習慣を霊して、複数を組み合わせて行います。
また、術後にこれらを行うことにょって、回復を促すことができ、日常的に活動する範囲が広がるなど、生活の質の向上に大きく役立ちます。
保存療法で改善しない場合には手術療法を検討します。
手術療法
関節の変形がどのような状態か、またどの程度進行しているかによって、手術の方法は異なります。
関節鏡下手術
軟骨の傷ついた部分を削るなどして、軟骨の形を整える。中期までの人が対象。
高位脛骨骨切り術
O脚を矯正する手術。中期までの人が対象。
人工膝関節置換術
人工関節に置き換える。末期の人が対象。
初期や中期の人は、保存療法を最低3〜6力月行うことが基本です。それでも症状が改善しないときに、手術療法が行われます。
変形性膝関節症の末期で、日常世界がままならないほどの痛みがあり、画像検査でも関節の変形が重度の場合は、人工膝関節置換術が行われます。
手術法や治療法の選び方
変形性膝関節症の手術は、大きく分けて「関節鏡下手術」「高位脛骨骨切り術」「人工膝関節置換術」の3つがあります。
どの手術法を選ぶかは、変形性膝関節症の病期や年齢、持病の有無、全身状態などをもとに考えますが、患者さんのライフスタイルや、術後にどんな生活を望んでいるかも、重要な判断材料になります。
たとえば、高位脛骨骨切り術は、骨の状態のよい(骨がもろくなる骨粗鬆症などがない)40〜60歳代の人が対象ですが、70歳以上でも骨の状態がよく、がスポーツや仕事で、活動的に過ごすことを望んでいる場合は、十分に検討したうえで行うこともあります。
反対に、若くて高位脛骨骨切り術が可能であっても、働き盛りで、長期間仕事を休むことが難しいという場合は、保存療法で悪化を遅らせながら、リタイア後にタイミングをみて、人工膝関節置換術を実施することも考えられます。
また、仕事などでどうしても正座が必要という人に、無理に人工膝関節置換術は行わず、保存療法や関節鏡下手術で様子をみることもあります。
膝の使い方をイメージする
つらい痛みをとることは、変形性膝関節症治療の大きな目的ですが、治療後の生活のイメージを、患者さん自身がしっかり抱くことも大切です。
たとえば、旅行に行きたい、仕事や趣味を続けたい、買い物や日常の生活を自分でしたいなど、痛みがよくなったら何をしたいか考えてみましょう。
膝の状態によっては、100%思いどおりにはならないかもしれませんが、何のために治療するのか目標を設定すると治療への意欲がわきます。
変形性膝関節症は、悪化すれば要介護や寝たきりを招く病気です。自立した生活ができる健康寿命を延ばすためにも目的を持った治療法を考えていくことが大事です。