膝に水がたまる病気のなかで最も多いのが変形性膝関節症です。
膝の関節が何らかの原因で「炎症」を起こすと急に「水」(関節液=滑液)がたまります。
これは関節液を多くだすことによって膝の骨が摩耗するのを防ぐ一種の防御反応でもあります。
もくじ
変形性膝関節症で膝に水がたまる原因
変形性膝関節症は炎症性の病気ではありませんが、進行した場合は膝の関節の中に炎症が発生し50ミリリットル程度の関節液がたまります。
膝に水がたっぷりとたまって、パンパンに腫れているような場合は注射針を刺して、関節液を抜く治療が選択されます。
また、左右の膝が同じように腫れることはあまりありませんが、もしそうなったとしたら、関節リウマチを疑います。
「関節周囲(滑液包)炎」という病気で膝が腫れることもあります。これは、痛みと運動制限をもたらします。関節は関節包という袋で覆われており、肘、膝、肩、股、足などの関節は、関節包と皮膚の間に、滑液という粘液をためて皮と関節の動きをスムーズにしています。
この部分が外的打撲など何らかの原因で炎症を起こすと、関節の外に水がたまり、皮膚表面が赤く腫れて痛くなります。
膝関節では「右(または左)膝関節滑液包炎」という病名になります。
滑液包は骨の突出部や腿が骨の上を通る部分など、摩擦を受けやすい場所にある潤滑装置ですが、そこに過剰な刺激が加わると炎症をおこし痛みをともなって水がたまります。
膝の間節に関節液がたまる病態を専門用語で「膝関節水症」といいますが、たまった水は炎症のバロメーターになります。関節液は体重を支えている大腿骨、半月板、脛骨などがこすれないようにする潤滑油の働きをしています。
膝の軟骨は血管が通っていないので、必要な栄養分を供給しているのがこの関節液です。
膝に水がたまる原因は、炎症によって、滑膜で、関節液を吸収する能力以上に関節液が多くつくられることです。
炎症というのはからだの中の異常を正常に戻そうとする組織・生体の営みのことで、体の中で戦争がおきている状態ともいえます。つまり、生体の均衡を破ろうとする病原菌や物理・化学的刺激に対して、それを抑え込もうとする白血球、リンパ球などが動員されて、その場所の異常を解消しようとした活動の痕跡が「水腫」なのです。
また、リウマチのように身体の炎症が滑膜に及んで、関節液を多くつくるため水腫がおこることもあります。
膝の水の抜き方と変形性膝関節症の診断
膝関節に針を刺す場合、皮虜表面を消毒薬(イソジン液)で徹底的に消毒し、ばい菌を完全に消滅させてから無菌的におこないます。
膝関節の中は無菌状態なので外部からばい菌が入らないように特別な注意が必要なのです。針を刺す場所は膝蓋骨(膝のお皿)上縁線上の外側からおこないますが、その際に針を入れやすく、痛みをなるべく少なくするために、内側から膝を圧迫します。
原関節液は少し黄色っぽい色(血が混じっている場合には黄褐色)で、にごりはありません。間接液が白く濁って、また、検査で1ミリリットルの中に白血球が2000個以上の場合は炎症反応が起きているということになります。
抜いた関節液を光にかざして脂肪滴があるかを調べます。無数の脂肪滴が認められれば骨折があると判断します。関節液にリンパ球内や好中球など、免疫や炎症に関係のある細胞が多く含まれますと、白くにごって見えます。
膝の病気の診断にはこの関節液の情報がたいへん重要になります。正常な関節液は無色透明ですが、感染や関節リウマチがあればにごります。変形性膝関節症では黄色調が強くなります。
関節リウマチでは関節液がサラサラになって、デブリス(肥大化した滑膜が膝の動きでこすれて関節内に遊離したもの)によって針先が詰まり、関節液を吸い出すのが困難なこともあります。
化腮性関節炎の場合は膿のような感じになり、結核性関節炎では比較的サラサラしているという特徴があります。
指間検査法
関節液がネバネバしているのか、サラサラしているのか、にごっているのかなどを調べて膝の病気の進み具合を考えます。
膝関節液のネバネバの程度を調べる方法を「指間検査法」といって、親指と人差し指の先に関節液を一滴落として、それを軽く圧迫して離してみます。そのときに粘性が高く納豆の糸のようにネバネバと伸びれば、レントゲン写真を見たうえで変形性膝関節症と判断します。
なお、高齢者では糖尿病や「シャルコー関節(神経障害性関節症)」もありうるので血糖値なとを検査することもあります。
こうした関節液の情報をもとに膝の専門医は、症状を次の5つに分類します。
膝の水から判断される病気
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変形性膝関節症を含む変形性関節炎のグループ【膝蓋軟骨軟化症、単純性膝関節炎、ベーカー嚢腫〕
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骨折や捻挫による外傷性関節炎のグループ〔半月板損傷、外傷性膝関節炎(靱带断裂など)、離断性骨軟骨炎〕
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リウマチなどの原因不明の関節炎のグループ〔関節リウマチ、間歇性膝関節水腫症(回帰性リウマチ、偶発性関節リウマチなど)、シャルコー関節(神経障害性関節症)〕
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結核性や化膿などの病原菌が原因のグループ〔化膿性膝関節炎(膝関節梅毒、膝関節結核など)〕
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痛風など代謝性関節炎のグループ〔痛風、偽痛風(関節軟骨石灰化症)〕
膝の水は抜くとクセになる?
整形外科で「膝の水を抜きましょう」と言われると、「クセになるから」と嫌がる人が時々います。
「膝の水抜きはクセになるの?」という疑問に対する答えは「いいえ」です。
だれが言い始めたかわかりませんが迷信です。膝に水がたっぷりとたまって、パンパンに腫れているような場合は注射器で関節液を抜く治療が必要になります。
また、関節液を詳しく調べることは変形性膝関節症を診断するうえで必要です。きちんとした治療を進めるために「水」(関節液)を抜いて調べるのです。
膝の腫れも少なく水も少量なら、いきなり「水」を抜くようなことはしません。安易に注射器で水を取りつづけると、栄養の供給が変化して、軟骨が脆くなって、やがて軟骨破壊をおこしてしまうこともあります。
水を抜く回数は多くて一か月に1,2回
膝の専門医は、水を抜くのは多くても1力月に1〜2回を目安にしています。
一時的に症状をやわらげるための処置を対症療法などと呼びますが、大切なのは病気の原因を考えて、水がたまらなくなる治療を進めることです。
水を抜いた後は一時的に腫れは引きますが再び水がたまることになります。それこそ正しい診断、適切な治療をしなければ、しよっちゅう水を抜いても、また水はたまってきます。
つまり、「水を抜く」は、症状をとるための治療で根本治療ではありません。根本的に治療しないと「水を抜いても」また水はたまってしまいます。
「水を抜く」のがクセになるのではなく、原因が残っているので、水がたまってくるのです。
「膝の水を抜く」とともに、原因を治す治療が必要です。
逆にいえば、水を何度抜いてもたまってくる場合は、変形性膝関節症の根本治療が進んでいない証拠になります。
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