変形性膝関節症とは何なのでしょうか?
ひざの関節は、膝のクッションとして働く軟骨がすり減ると、炎症や骨の変形が生じて変形性関節になります。
簡単に言うと、それが膝に起こったものが「変形性膝関節症」です。
もくじ
変形性膝関節症とは軟骨がすり減り進行する病気
変形性膝関節症とは膝を守る2種類の軟骨がすり減ってしまう病気です。
膝の骨は、骨の端を覆う「関節軟骨」と、骨と骨の隙間にある「半月板」という軟骨で守られています。
関節軟骨は白くなめらかで、まるで陶器のような外見です。適度な固さと弾力性があるため摩擦に強く、関節の動きをスムーズにしています。
一方、半月板は三日月のような形をした板状の軟骨です。弾力性に富み、関節や骨に伝わる衝撃をやわらげるほか、骨と骨の間で、膝関節を安定させるという役割ももっています。
何らかの原因で関節軟骨や半月板がすり減ると、膝のなめらかな動きやクッション性、安定性が損なわれ、痛みなどが出現します。
この痛みは放っておくと、どんどん進行、悪化していきます。
これが、変形性膝関節症という病気です。
軟骨がすり減る原因
軟骨がすり減る主な原因は、肥満や、膝に負担のかかるスポーツや仕事などですが、骨折や靭帯損傷、半月板損傷などけがが影響することもあります。
また、高齢になると、軟骨細胞の新陳代謝(生まれ変わり)が衰え、軟骨が薄くなったり、傷つきやすくなったりします。
長年の過度な負担が軟骨を痛めつける
軟骨は時間をかけてすり減っていくため、初期には気づきにくいのですが、だんだん痛みを感じるようになります。歩き始めや立ち上がりのときに痛み、少し休むと痛みが消えるというのが、初期の特徴的な症状です。
たいしたことがないと思って放っておくと、軟骨はますます薄くなり、骨に、骨棘というトゲのようなものができたり、骨のう胞とい、虫食い状の穴があいたりもします。
軟骨ががすり切れ、ほとんどなくなってしまうと、骨同士がぶっかるようになります。
変形性膝関節症の進行とともに、〇脚やX脚も強くなり、外見的な変化も生じます。
変形性膝関節症の進行と痛みの特徴
初期の変形性膝関節症
関節軟骨や半月板がすり減り、関節の隙間が狭くなります。
- 運動した翌日に痛む
- 膝のこわばりやひっかかり感
- 歩き始めや立ち上がりの痛み
- 膝が腫れる、熱っぽくなる
中期の変形性膝関節症
関節の隙間が初期よりさらに狭くなります
- 階段の上り下り(とくに下り)で痛む
- 痛みのために正座が困難になる
- 膝の曲げ伸ばしがしにくい
- 膝を動かすとガリガリと音がすることがある
- 筋肉や靭帯、関節包の疲労が強くなる
進行した末期の変形性膝関節症
関節の隙間がほとんどなくなります。
- ただ立っているだけで痛い
- 安静時や夜間にも痛む
- O脚やX脚がひどくなる
変形性膝関節症で膝が痛くなる仕組み
ごく初期の痛みは、運動をしたあとやその翌日に起こります。
関節を包む関節包や、膝の靭帯や筋肉に過度な負担がかかったための痛みで、膝を休ませれば治まります。
少し進むと、変形性膝関節症に特有の動かし始めの痛みが出現しますが、これは炎症によるものです。削り取られた軟骨の破片が、関節の内側を覆う滑膜を刺激するため、炎症が起こるのです。
滑膜に炎症が起こると、多量の関節液が分泌されますが、そこには炎症を悪化させる物質も含まれています。
放置すればさらに炎症が進み、膝を曲げ伸ばしするたびに痛むようになり、歩行や正座がつらくなります。
進行して軟骨がほとんど失われた末期には、ただ立っているだけでも痛く、やがては安静にしているときや、夜寝ている間にも痛むようになります。
なぜ膝に変形関節症が起きるのか?
変形性関節症になりやすいのは、首、肩、肘、手の指、背骨(脊椎)、股関節、膝、足の指の関節などです。
なかでも、体を支えて大きな力がかかる腰部の背骨関節、股関節、膝関節は高リスクです。
膝関節には、平地を歩くときで体重の約2〜3倍、走るときで約5〜7倍、階段の上り下りで約3〜5倍など、とても大きな負担がかかっています。
そのため、変形性関節症のなかでも変形性膝関節症がもっとも多く、国内に約1000万人の患者さんがいるといわれています。
O脚の人は関節の外側に、より多くの負担がかかります。日本人はO脚の人が多いため、患者さんの大半は、膝の内側の軟骨がすり減るタイプです。
50代から急増、80代はほとんど膝関節症
また、変形性膝関節症は加齢とともに増加します。50歳を越えると急増し、80歳以上の人の膝を調べるとほとんどに変形性膝関節症がみられるともいわれています。
関節軟骨は、70〜80%の水分と、コラーゲン、プロテオグリカン(糖とたんぱく質の複合体)などからできています。これらの物質は、加齢によって減少していきますが、その理由ははっきりわかってい
ません。
しかし最近の研究で、過剰な力がかかるなど、外部からの刺激に対して、関節軟骨が破壊(組織が壊れてすり減る)、変性(弾力性が低下するなど、性質が変わる)、増殖(骨軟骨形成など)という反応を繰り返しているうちに、閨節の隙間が狭くなり、骨棘と呼ばれる骨のトゲができて変形性膝関節症が進行していくことが明らかになっています。