変形性膝関節症の手術後の合併症とその予防法について解説しています。
術後合併症には、手術中や術直後に発生するものと、術後一定期間過ぎてから発生するものがあります。
合併症を理解し、予防を心がけましょう。
もくじ
変形性膝関節症の手術後の主な合併症
手術中・術直後には血栓症や脂肪塞栓に特に注意が必要です。
合併症①血栓症
手術やその後の安静のために、長時間下肢を動かさないと、静脈の血流が滞って、「血栓」という血のかたまりができやすくなります。それを「深部静脈血栓症」といいます。
血栓は自然に消えることも多いのですが、大きくなって下肢の静脈をふさぐと、下肢のむくみやふくらはぎの痛みが起こります。いわゆるエコノミークラス症候群(旅行者血栓症)と同じです。
まれに、血栓が血流に乗って遠くまで飛んでしまうことがあり、肺の動脈に飛んだ場合は、「肺塞栓」という深刻な合併症が起こります。
すると、酸素と二酸化炭素の交換がうまくいかなくなり、突然死することもあります。
また、血栓が脳の動脈に飛んだ場合は、「脳塞栓」が起こります。とくに高齢の人や、過去に深部静脈血栓症を経験した人は、これらのリスクが高くなります。
合併症②脂肪塞栓
血栓ではなく、手術中に骨髄から流れ出した脂肪が、肺や脳、腎臓の動脈に詰まる「脂肪塞栓」も、骨の手術では注意すベき合併症です。
血栓症や脂肪塞栓を予防するために、当日は術前から下肢を圧迫するストッキングを着け、下肢を一定のリズムで圧迫して血流を促進する「間欠的空気圧迫法」を行います。
術後2〜3日目からは、足を動かすリハビリを徐々に始めます。
間欠的空気圧迫法とは?
専用の器具を利用して空気の圧力により、一定のリズムでマッサ一ジを行い、下肢の静脈の血流を促します。
合併症③肺合併症
主に全身麻酔で起こる肺合併症も予防が大切です。
手術に欠かせない麻酔は、肺の働きを低下させる作用があります。とくに全身麻酔の場合は、気管内にチューブを揷入し、人工呼吸器で呼吸を管理するため、チューブを抜いたあとにもその影響が残り、肺の働きが一時的に低下したり、痰が分泌されやすくなったりします。
このような状況に加え、手術中から術後にかけて、長時間横になることも肺に影響します。肺の血流がわるくなり、肺がつぶれる無気肺や、肺に水がたまる肺水腫、痰が増えて炎症が生じる肺炎といった肺合併症が起こりやすくなるのです。
肺合併症は術前からの予防が重要です。看護師の指導で、痰出しや深呼吸の練習を行い、術後は積極的にこれらを行いましょう。
また、ロの中の細菌が肺に入り込んで肺炎を起こすのを防ぐために、虫歯などがあれば術前に治療をすませ、術後は口腔ケア(うがいや歯磨きでロの中を清潔にすること)を心がけます。
体を動かすことも大切です。一般的には、術後1日目から、看護師の助けを借りて起き上がり、体位交換などで体を動かします。
医師の許可が出たら、できるだけべッドを離れて動くょうに(早期離床)しましょう。
合併症④細菌感染
手術した部位の細菌感染は、発生率が1〜5%以下とまれですが、起こってしまうと再手術になることも多いので、抗生物質で予防します。
細菌が膝に感染する経路は、傷口からとは限らず、体内の別の病巣からということもあります。たとえば、虫歯や歯槽膿漏、水虫などが原因となることもあるので、感染性の病気は術前に治療しておきましょう。
術後3力月以上たってから、細菌感染が起こることもあり、それを「晚期感染」と呼びます。肝臓病や糖尿病の悪化、がんなどで大きく体調を崩したときが危険なので、長期の体調管理も大切です。
人工関節の破損などにも注意
術後は前述のとおり早期離床が重要であり、手術した膝のリハビリも早期から行うことによって、膝の働きがよくなることがわかっていますが、膝のリハビリは、治り具合をみながら、少しずつ行うことが大切です。
とくに、関節鏡下手術は痛みが少ないため、つい頑張りすぎてしまうことも少なくありませんが、急に膝の運動量を増やすと、術後の炎症が悪化して痛みが残ることがあります。
高位脛骨骨切り術の場合は、骨がうまくつかない癒合不全が起こり、矯正した膝の角度(大腿骨脛骨角)が、もとに戻ってしまうことがあります。
人工膝関節置換術では、人工関節のゆるみや破損、摩耗(すり減ること)、膝の脱臼が、特有の合併症としてあげられます。
これらの合併症は、手術したところの回復の程度を見極めながら、適切なリハビリを行うことによって予防が可能です。
そして、術後も長くセルフケアを行っていけば、手術した膝を守ることができ、人工膝関節の寿命を伸ばすことができます。
変形性膝関節症手術後の合併症の予防法
合併症 | 予防法 | |
手術中・術直後(1週間以内) |
深部静脈血栓症 肺塞栓 脳塞栓 脂肪塞栓 |
弾性包帯や、間欠的空気圧迫法で下肢の静脈の血流を促す 血栓ができるのを予防する薬剤の内服や注射 |
創(手術跡)の痛み | 鎮痛薬:座薬、硬膜外麻酔など | |
出血 |
早期発見(ドレ一ンという管で、出血した血液が体内にたまらないようにしているので、出血量をこまめにチェックするなど) 術前に自己血を400〜800採血して出血に備える輸血、水分補給、鉄剤の内服なども |
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細菌感染(早期感染) | 抗生物質の投与、創の清潔を保つ、感染性の病気を治療する | |
骨折 |
骨粗鬆症の予防・治療 術前に骨の状態を把握して手術法を検討する |
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術後一定期間たってから | 細菌感染(晩期感染) |
体調を整える 膝の腫れや熱感を早期に発見し、血液検査などで細菌感染を早期発見して治療する |
癒合不全 大腿骨脛骨角の戻り |
リハビリを急激に進めない(回復の状況に合わせて適切なリハビリを行う) 骨粗鬆症治療薬の内服 定期的なX線検査 |
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人工膝関節のゆるみ、破損、摩耗、脱臼 |
リハビリを急激に進めない(回復の状況に合わせて適切なリハビリを行う) ひざに負担をかけない 定期的なX線検査で早期発見し、早期治療する |
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