高位脛骨骨切り術は脛骨の一部を切り取り、膝の異常な内反(O脚)を矯正します。
膝全体にバランスよく荷重がかかるようにして、変形性膝関節症の進行を抑える手術です。
高位脛骨骨切り術には2種類の手術法があり、それぞれに長所と短所があります。
2種類の高位脛骨骨切り術
高位脛骨骨切り術には、「オープンウェッジ法」と「クロ—ズドウェッジ法」という2種類があります。
オープンウエッジ法は、脛骨の内側に切り込みを入れ、くさび状に広げて人工骨で埋め、プレートで固定する手術です。
一方、クロ—ズドウェッジ法は、脛骨(すねの骨)の外側をくさび状に切り取り、骨を合わせてプレ—トで固定します。脛骨のうしろにある腓骨も、長さを合わせるために少し切り取ります。
主流は、腓骨を切る必要がないことと、人工骨の材質がよくなっていることから、オープンウェッジ法です。しかし、膝蓋大腿関節症の強い人には向きません。
また、矯正する角度に限度があるため、O脚の程度が強い人にも不向きです。
手術に要する時間は、オープンウェッジ法とクロ—ズドウェッジ法どちらも90分程度です。
高位脛骨骨切り術のメリット
高位脛骨骨切り術は活動的に過ごしたい人に適した手術だといえます。
高位脛骨骨切り術の最大のメリットは、術後も仕事やスポーツに、ほとんど制限がないことです。
骨がつく(癒合する)までに時間がかかるため、入院期間が4〜6週間と長く、日常生活に戻れるのは、字術から2〜3力月後
くらいですが、活動的に過ごしたいという人には適しています。
高位脛骨骨切り術に適した人
高位脛骨骨切り術を実施できるのは次のような人です。
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変形性膝関節症の初期から中期
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膝の内側だけが痛んでいて、それ以外の部分は健康
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O脚の程度をあらわす「大腿骨脛骨角」が200度程度
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関節の動きや日常生活の活動性がある程保たれている
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肥満が高度でない(高度の肥満は減量が必要)
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骨の強度が保たれている(骨粗鬆症や関節リウマチのある人、人工透析を受けている人は行えません)
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喫煙していない(喫煙は骨癒合を妨げます)
高位脛骨骨切り術に適した年齢は30〜70歳の人とされていますが、状況によっては、これよりも若い人や高齢の人でも可能です。
高位脛骨骨切り術に使う「人工骨」
骨の欠けた部分を補うために、人エ的につくられた素材を「人工骨」といいます。
かつては、金属やセラミックスが使われていましたが、最近はハイドロキシアパタイ卜などのバイオ(生体機能)セラミックスが主流です。
バイオセラミックスは、体に負担のかかりにくい素材で、時間とともに吸仅されて骨に置き換わることが期待できます。最近は、高い確率で骨に置き換わる素材も開発されています。
高位脛骨骨切り術のオープンウェッジ法を行うとき、以前は一部に腰の骨を使っていたため、患者さんの負担が大きかったのですが、人エ骨の進歩によって体への負担が少ない低侵襲化(痛みや出血などが少ないこと)が進んでいます。