膝が痛くなる病気は、変形性膝関節症だけではありません。痛みの原因によって、治療法も異なるので、きちんと区別する必要があります。
ここでは、変形性膝関節症と間違えやすい膝が痛くなる病気や膝の痛めやすいスポーツを解説しています。
スポーツによる膝のけがや障害
子どもから大人までよくみられるのは、半月板損傷や靱帯損傷などのスポーツ外傷あるいはランナ—膝やジャンパー膝に代表されるスポーツ障害による膝の痛みです。
スポーツ外傷は、一度の急激な圧力によって起こるけがのことで、バスケットボールやバレーボール、サッ力ー、スキーなどでよく発生します。
一方、スポーツ障害は、繰り返し同じ動作をすることで膝に過度の負担がかかり、その部分が損傷する(傷つく)ことです。
治療は、基本的にその部分を安静にして組織の回復を待ちますが、必要に応じて手術を行います。
スポーツ外傷
バスケットボール、バレーボール、サッ力ー、スキー等
スポーツ障害
マラソン、登山等
膝の痛みが起こる病気
膝の痛みが生じやすい病気は以下の通りです。
①半月板損傷
②靱帯損傷および捻挫(前+字靱帯、後+字靱帯、内側側副靱帯、外側側副靱帯)
③膝蓋大腿関節障害(滑膜ひだ障害、膝蓋骨亜脱臼・脱臼、膝蓋大腿関節症)
④関節症と関連疾患(変形性膝関節症、特発性骨壊死、神経病性関節症、ステロイド関節症)
⑤炎症性疾患(関節リウマチ、痛風、偽痛風、化膿性関節炎、結核性関節炎)
⑥腫瘍性疾患(色素性絨毛結節性滑膜炎、滑膜骨軟骨腫、ベーカーのう腫、滑膜肉腫)
関節の病気
関節の病気で代表的なものは、「化膿性関節炎」と「特発性骨壊死」です。
関節に細菌が入り込み、化膿する化膿性関節炎は、どの関節にも起こりますが、もっとも多いのは膝です。
ほとんどが黄色ブドウ球菌の感染によるもので、感染経路は、関節のけがや関節内注射のほか、扁桃炎や膀胱炎など、体内のほかの感染巣から、細菌が血流にのって移動して膝で増殖することもあります。
症状は、関節の強い痛みや腫れなど、炎症症状のほかに、発熱や悪寒、だるさなどを伴い、放置すると関節の軟骨や骨が破壊されていきます。
治療は、まず抗菌薬(抗生物質)の点滴を行い、関節の中に膿がたまっていれば、注射器で吸って取り除いたりもします。
軟骨や骨の破壊が強い場合は、感染が治まってから、人工関節に置き換える手術を行うこともあります。
特発性骨壊死は、骨の組織が死んでしまう病気で、大腿骨顆部という部分に起こると、膝が突然激しく痛みます。
60歳以上の女性に多くみられますが、原因は不明です。痛み止めなどの薬物療法や、大腿四頭筋を鍛える運動療法が行われますが、骨の壊死が進むと手術も検討されます。
変形性膝関節症と間違えやすい全身の病気
関節リウマチ
「関節リウマチ」は、自己免疫疾患の1つです。
自己免疫疾患とは、本来は細菌やウィルスなどから体を守る免疫の仕組みに異常が起き、自分自身の体を攻撃するようになる病気です。関節リウマチの場合は、その攻撃が関節に
向かうため、全身の関節に炎症が起こり関節が破壊されるのです。
30〜50歳代の女性に発症することが多く、指の第2関節や手首など、はじめは小さな関節に痛みや腫れが起こりやすいこと、左右対称に症状があらわれることなどが特徴です。
血液検査をすると、RA抗体という物質の値が高いので、診断は比較的容易です。
最近は、薬物療法の進歩が目覚ましく、とくに生物学的製剤という治療薬が登場してからは、早期の適切な薬物療法により、寛解(症状が治まり、病気がコントロールされている状態)に持ち込めることも多くなっています。
痛風
「痛風」は、血液中の尿酸値が高くなる高尿酸血症にともなって起こります。よく知られているのは、足の親指の付け根の関節に突然、発作的に激痛が出現するという症状ですが、膝にその痛みがあらわれることもありす。
血液中に尿酸が過剰に増えると、尿酸が結晶化して関節に沈着します。それがはがれ落ちると、白血球などがそれをして炎症が起こり、痛みが生じるのです。
痛風発作を起こすのは90%以上が男性で、中高年に多いですが、最近は若年化しています。痛風の治療は、薬物療法や食事療法、運動法による尿酸値のコントロールが基本です。